第5回は番外編です。私が一番最初に歌詞を見たとき衝撃を受けたので今回は完全に私個人の趣味になります。
マキシマム ザ ホルモンといえば、激しいサウンドと、一筋縄ではいかない歌詞の世界観が魅力ですよね。
中でも、2011年にリリースされたシングル『グレイテスト・ザ・ヒッツ 2011〜2011』に収録されている「鬱くしき人々のうた」は、そのタイトルからして強烈なインパクトを放っています。
「鬱(うつ)」という、ともすれば重く、暗いイメージの言葉に、「美しい」という言葉をつなげたこの曲。 そこには、一体どんなメッセージが込められているのでしょうか。
今回は、この曲が生まれた背景や、歌詞に込められた深い思いを、一緒に読み解いていきたいと思います。す。
まずは公式YouTubeで聴いてみよう
何はともあれ、まずは一度聴いてみてください。
マキシマム ザ ホルモン『鬱くしき人々のうた』Music Videoより
衝撃的な歌詞は「ガチ」だった。曲が生まれた背景
この曲の作詞作曲を手がけたマキシマムザ亮君は、この曲ができた当時、バンドの活動休止中だったこともあり、精神的にかなり落ち込んでいた時期だったと語っています。
私たちが歌詞を見て感じる「苦しさ」や「生きづらさ」は、決して大げさな表現ではなく、亮君が実際に感じていたリアルな心境が、そのまま叩きつけられているんです。
日々ギリギリ 生きる気デンジャー 下痢 シミ・シミ・シミ こげ茶 吐く息 慰めて飲んじゃ 来る「シネ・シネ・シネ・」の幻聴
出典:マキシマム ザ ホルモン「鬱くしき人々のうた」(作詞・作曲:マキシマムザ亮君)
こうした部分を読むと、本当にギリギリの状態で生きていたことが伝わってきますよね…。
でも、亮君はすごいんです。 彼は、そうした自分の「心の弱さ」や「醜さ」こそが、マキシマム ザ ホルモンの音楽の「強さ」になっていると信じている、とも語っています。
普通なら隠してしまいたいような暗い感情や葛藤を、あえて隠さず、すべて曝け出す。 それをロックとして爆発させることこそが、彼らのスタイルなんですね。
「鬱」が「美しい」理由とは?歌詞の意味を考える
では、なぜ彼はその状態を「美しい」と歌ったのでしょうか。
絶望のど真ん中で叫ぶ「生」
この曲には、どうしようもない絶望感が満ちています。
我が存在価値 もはや駄菓子以下 (中略) お医者行ってもまだ効かねえ 会社行っても働けん もうさっぱり頭働かぬ 堪忍
出典:マキシマム ザ ホルモン「鬱くしき人々のうた」(作詞・作曲:マキシマムザ亮君)
自分を「駄菓子以下」と表現したり、何をしてもダメだと嘆いたり…。 本当に辛い状況が伝わってきます。
でも、この曲はただ「辛い」「死にたい」と歌っているだけじゃないんです。 注目したいのは、サビの「LOVE&LOVE!!! 鬱PEOPLE」や「ぶちまけろPEOPLE!」というフレーズ。
これは、同じように苦しんでいる人々(鬱PEOPLE)に対して、「その感情を隠さずに全部吐き出せ!」と呼びかけているように聞こえませんか?
「鬱」であることを否定せず、むしろ「それこそがお前たちなんだ!」と、ある意味で力強く肯定しているんです。
鬱くしき人々よ「0.5生懸命」にて勝て!
出典:マキシマム ザ ホルモン「鬱くしき人々のうた」(作詞・作曲:マキシマムザ亮君)
一生懸命じゃなくていいよ。半分だけ頑張ってみようって いい言葉ですよね。
「死にたがりで、生きたがり」という最大のメッセージ
そして、この曲のすべてを象徴するのが、最後のこの一文です。
ボク 死にたがりで 生きたがりです。
出典:マキシマム ザ ホルモン「鬱くしき人々のうた」(作詞・作曲:マキシマムザ亮君)
この最後の締めで心を持ってかれてしまいました。
涙が止まらなかったです。
「死にたい」と思うほど辛い。 でも、その一方で、心の底では「生きたい」と強く願っている。
これこそが、人間の、そして「鬱」の苦しさの正体なのかもしれません。 綺麗ごとじゃなく、矛盾だらけで、醜くて、格好悪い。
でも、そんな風に矛盾を抱えながらも、必死に生きようともがいている姿こそが、何よりも「美しい」のではないか——。
亮君は、そう言いたかったのではないでしょうか。
この曲は、辛い気持ちを無理にポジティブに変えようとはしません。 「辛いよね、苦しいよね、わかるよ。そのままでいいから、全部吐き出せ」と、どん底の隣に寄り添ってくれるような、そんな優しさと強さを感じる曲なんです。
実は3年前に出来ていた幻の曲
この「鬱くしき人々のうた」は、2011年に発売されたシングル『グレイテスト・ザ・ヒッツ 2011〜2011』に収録されていますが、もともとは2008年のシングル『爪爪爪/「F」』に入る予定だったんです。
作曲者であるマキシマムザ亮君が言うには、「あの3曲(爪爪爪、「F」、Kill all the 394)に、さらにこの曲まで入れたら贅沢すぎるだろう!」と感じたため、あえて収録を見送ったそうです。いわば、温存されていた「切り札」のような曲だったんですね。
曲作りも、何かを狙って作ったというよりは、亮君の中に突然「確変モード」のようなものが訪れて、一気に作り上げたと語っています。溜まっていた感情が、偶然にも一気にあふれ出して形になったようです。
「心の弱さ」が武器になる
亮君は、ホルモンの音楽の強さは、自分の「心の弱い部分」や「グジュグジュした感情」から生まれていると信じています。
例えば、誰かを脅す側と、脅された側、どちらがロックか?と問われれば、「後者(弱い立場)であるべきだ」と語っています。中学生の頃から心の中に溜め込んできた色々な悔しい感情や私的な恨みを、音楽という爆弾に変えてきたそうです。
「鬱くしき人々のうた」も、そうした亮君の個人的な感情が色濃く反映された曲と言えるでしょう。日々の辛さやコンプレックスを爆発させながらも、どこか前向きな力強さを感じさせるのは、ホルモンならではの魅力ですね。
漫画家・卯月妙子さんとのつながり
この曲のタイトルは、後に漫画家の卯月妙子(うづき たえこ)さんの作品のタイトルにもなりました。その名も『鬱くしき人々のうた 実録・閉鎖病棟』です。
卯月さんは、ご自身の精神科の閉鎖病棟での体験を漫画に描いており、その壮絶な内容が多くの人に衝撃を与えました。
亮君は、自身の曲名がこの作品のタイトルとして使われたことについて、「こんな凄い作品のタイトルに自分の曲名を使ってもらえた事に胸熱、嬉ション」とコメントしています。自分の生み出したものが、別の形で誰かの心に響き、作品として結びついたことに深く感動したようです。このエピソードからも、この曲が持つテーマの深さがうかがえますね。
まとめると、「鬱くしき人々のうた」は、亮君のパーソナルな感情が爆発して生まれ、後に別のアーティストの魂を揺さぶる作品とも共鳴した、非常にドラマチックな背景を持つ曲なのです。

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