第43回 償い / さだまさし

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ryou

はじめまして! このブログでは、音楽に詳しいわけではない、むしろ疎い部類である私、りょうが、世の中の有名な曲について「これってどういう歌なんだろう?」と調べたことを、のんびり雑談みたいに語っていきます。
このブログを書いていると、曲の魅力について「あれもこれも語りたい!」という気持ちでいっぱいになります。ですが、いつもぐっとこらえています。

なぜなら、この物語の主役は、素晴らしい作品と、それを聴く皆さん一人ひとりだからです。

私の解説が、皆さんが音楽から自由に何かを感じ取る楽しみの邪魔をしてはいけない。そんな想いから、あえて多くを語らず、皆さんの心の中に生まれる感想のための「余白」を大切にしています。

ぜひ、あなただけの感じ方で、音楽の世界を楽しんでみてください。

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こんにちは。 世の中にはたくさんの名曲がありますが、聴くたびに胸がぎゅっと締め付けられて、同時に、人の心の深さに触れて温かい涙があふれそうになる…そんな曲がありますよね。

さだまさしさんの「償い」は、まさにそんな一曲ではないでしょうか。

まるで一本の短編映画を見ているかのような重厚な物語。 今日は、この曲がどうやって生まれたのか、そしてあの胸を打つ歌詞にはどんな意味が込められているのか、一緒にそっとたどっていきたいと思います。

まずは公式YouTubeで聴いてみよう

何はともあれ、まずは一度聴いてみてください。

償い さだまさしオフィシャルYouTubeチャンネルより

この歌が生まれた背景 ~ある知人の「実話」~

「この曲、もしかして実話なの?」 そう感じた方も多いかもしれません。その通り、この曲はさだまさしさんの知人女性が体験した、とても辛い出来事が元になっています。

その女性は、交通事故で大切な旦那さまを亡くされました。

加害者となった男性は、遠い町から毎月、賠償金を送り続けてきたそうです。 でも、彼女にとってはそのお金が届くたびに、あの日の辛い事故を思い出してしまいます。そして、茶道や華道の先生として、経済的にも自分で立っていけるようになっていました。

そこで彼女は、ある日、その男性に手紙を書きます。 「もう、お金は送ってくださらなくて結構です」と。

さだまさしさんは、この「被害者側」である知人女性からお話を聞き、そこから発想を得て、あえて「加害者側」の視点に立ってこの「償い」という歌を作詞・作曲したのです。

歌詞の意味をたどる ~「ゆうちゃん」の物語~

歌詞を追いながら、主人公「ゆうちゃん」の心の中を見ていきましょう。

(物語のはじまり)償いの日々

月末になるとゆうちゃんは薄い給料袋の封も切らずに 必ず横町の角にある郵便局へとび込んでゆくのだった 仲間はそんな彼をみてみんな貯金が趣味のしみったれたと 飲んだ勢いで嘲笑ってもゆうちゃんはニコニコ笑うばかり

【出典】 さだまさし「償い 」 作詞・作曲:さだまさし

物語は、主人公「ゆうちゃん」の毎月の行動から始まります。 仲間たちからは「貯金が趣味のケチなやつ」とからかわれても、彼はニコニコ笑うだけ。 でも、語り手である「僕」だけは知っています。そのお金が、彼の「貯金」ではなく、重い「償い」のために消えていくことを…。

(罪と後悔)取り返しのつかない事故

配達帰りの雨の夜横断歩道の人影に ブレーキが間にあわなかった 彼はその日とても疲れてた 人殺しあんたを許さないと彼をののしった 被害者の奥さんの涙の足元で 彼はひたすら大声で泣き乍ら ただ頭を床にこすりつけるだけだった

【出典】 さだまさし「償い 」 作詞・作曲:さだまさし

彼が犯してしまった、取り返しのつかない「哀しい誤ち」。 疲れと雨の中での、交通死亡事故。 被害者の奥さんから「人殺し」とののしられ、彼はただ、泣きながら謝ることしかできませんでした。この日から、彼の人生は変わってしまいます。

(転機)七年目の手紙

それから彼は人が変わった何もかも 忘れて働いて働いて 償いきれるはずもないがせめてもと 毎月あの人に仕送りをしている

(中略)

それは事件から数えてようやく七年目に初めて あの奥さんから初めて彼宛に届いた便り

「ありがとう あなたの優しい気持ちはとてもよくわかりました だからどうぞ送金はやめて下さい あなたの文字を見る度に 主人を思い出して辛いのです あなたの気持ちはわかるけど それよりどうかもぅ あなたご自身の人生をもとに戻してあげて欲しい」

【出典】 さだまさし「償い 」 作詞・作曲:さだまさし

七年間、ただひたすらに働き、仕送りを続けるゆうちゃん。 そんな彼のもとに、初めて被害者の奥さんから手紙が届きます。 それは、拒絶でも怒りでもなく、「ありがとう」という言葉から始まる、あまりにも優しく、そして重い内容でした。

奥さんもまた、「彼の文字を見るたびに主人を思い出して辛かった」という、7年間の苦しみを抱えて生きてきたことがわかります。 そして最後は、加害者であるゆうちゃんの未来を心配する「あなたの人生を戻してあげて欲しい」という言葉で結ばれていました。

(心の解放)あふれ出す涙

手紙の中身はどうでもよかったそれよりも 償いきれるはずもないあの人から 返事が来たのがありがたくてありがたくて ありがたくてありがたくてありがたくて 神様って思わず僕は叫んでいた 彼は許されたと思っていいのですか

【出典】 さだまさし「償い 」 作詞・作曲:さだまさし

ゆうちゃんは泣き崩れます。 手紙に「許す」とは書かれていなくても、7年間、自分の存在を無視され続けてきた相手から、初めて「返事が来た」という事実。 それが、彼にとっては何よりもの「救い」であり、「許し」の光のように感じられたのです。

歌詞に込められた本当の思い

この曲の核心、さださんが一番伝えたかった思いは、最後のこのフレーズに込められています。

人間って哀しいね だってみんなやさしい それが傷つけあってかばいあって 何だかもらい泣きの涙がとまらなくて

【出典】 さだまさし「償い 」 作詞・作曲:さだまさし

事故を起こしてしまった「ゆうちゃん」も、きっと根は真面目で優しい青年だったのでしょう。 大切な人を奪われた「奥さん」も、7年という長い時間をかけて、自分を苦しめた相手の未来を願うほどの、深い優しさを持った人でした。

そんな「優しい」人たちが、たった一度の過ちによって、お互いを「加害者」と「被害者」として傷つけあい、苦しみ続けなければならない

それが人間のどうしようもない「哀しさ」です。

でも、そんな「哀しい」生き物でありながら、最後には相手を思いやり、「かばいあい」、許そうとする「優しさ」も人間は持っている。

法律やお金だけでは決して解決できない、「心の償い」と「心の許し」。 この歌は、その尊さと重さを、静かに、でも強く私たちに問いかけてくれているように感じます。

心に響く「償い」の秘話

この曲には、その影響力の大きさを物語る、有名な「秘話」があります。 曲が発表されてからずっと後、2001年のこと。 ある傷害致死事件の裁判で、心から反省しているようには見えない加害者の少年たちに対し、裁判官が判決の後、この「償い」の歌詞を読み聞かせて諭(さと)したのです。

「この歌の若者は命がけで謝罪した。君たちはどうだ」と。

法律で裁くことには限界がある。本当に大切なのは「心からの謝罪」と「償いの気持ち」であると、裁判官も伝えたかったのでしょうね。


「償い」は、聴くたびに「もし自分がゆうちゃんだったら」「もし自分が奥さんだったら」と考えさせられる、本当に深い曲です。 人の弱さ、強さ、哀しさ、そして優しさ。そのすべてが詰まったこの歌を、これからも大切に聴き続けていきたいですね。

あなたはこの曲を聴いて、どんなことを感じましたか?

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