記念すべき第1回目のテーマは、平井堅さんの「ノンフィクション」です。
最近、TVでほいけんたさんが歌ってるのを見て懐かしいなと思い調べてみました。
2017年にリリースされたこの曲。 美しいメロディとは裏腹に、胸をえぐられるような鋭い言葉たち。 「どうしてこんなに苦しいんだろう」「なんのために生きてるんだろう」 そんな、誰もが一度は感じたことのある、心のヒリヒリした部分にそっと触れてくれるような曲ですよね。
この曲は一体、どんな背景から生まれたのでしょうか。 そして、あの歌詞にはどんな意味が込められているのでしょうか。 一緒にその秘密を紐解いていきたいと思います。
まずは公式YouTubeで聴いてみよう
何はともあれ、まずは一度聴いてみてください。曲の世界に引き込まれます。
(平井堅 『ノンフィクション』MUSIC VIDEOより)
この曲ができた「きっかけ」とは?
この曲が生まれるきっかけは、大きく分けて二つあったと言われています。
一つは、ドラマ『小さな巨人』の主題歌のお話があったことです。平井堅さんはこのドラマの脚本を読んで、曲作りを始めました。ドラマの内容に合わせて、人生のままならなさや葛藤といったテーマが盛り込まれています。
そしてもう一つ、平井堅さんにとって非常に大きな個人的な出来事がありました。それは、この曲を制作している時期に、大切なご友人が自ら命を絶ってしまったことだそうです。
この悲しい出来事が、曲の方向性に大きな影響を与えました。平井堅さんはインタビューで、この曲は「今年初頭に自殺してしまった友人への気持ちを綴った曲」だと語っています。
また、「惰性で見てたテレビ消すみたいに 生きることを時々やめたくなる」といったドキッとするような歌詞も、平井堅さんが感じていたこと、言いたかったことを素直に表現した結果だそうです。誰もが心のどこかに抱えているかもしれない、ふとした瞬間の虚しさや生きることの苦しさに、そっと寄り添ってくれるような歌詞ですよね。
このように、「ノンフィクション」はドラマの主題歌というきっかけがありながら、そこに平井堅さん自身の深い悲しみと、亡き友への切実な想いが重なり合って生まれた、まさに「ノンフィクション(事実)」の感情が込められた楽曲なんです。
「本当を知りたい」— 歌詞に込められた切実な思い
この曲の歌詞は、きれいごとを一切排除した「ノンフィクション(=現実)」から始まります。
描いた夢は叶わないことの方が多い 優れた人を羨んでは自分が嫌になる 浅い眠りに押し潰されそうな夜もある 優しい隣人が陰で牙を剥いていたり 惰性で見てたテレビ消すみたいに 生きることを時々やめたくなる
出典:平井堅「ノンフィクション」(作詞:平井堅)
SNSを開けば、誰かの「成功」や「幸せ」が目に入ってくる。 それに比べて自分は……と落ち込んだり、人間関係に疲れてしまったり。 「もう、全部リセットしてしまいたい」 そんな風に、ふと心が折れそうになる瞬間。
これは、平井堅さんご自身が感じていることでもあり、現代を生きる多くの人が共感できる「現実」ですよね。
そして、サビで彼はこう問いかけます。
人生は苦痛ですか? 成功が全てですか? 僕はあなたに あなたに ただ会いたいだけ
出典:平井堅「ノンフィクション」(作詞:平井堅)
世の中は「成功すること」「正しくあること」を求めがちです。 でも、平井堅さんは「そんなものはどうでもいい」と歌います。
みすぼらしくていいから 欲まみれでもいいから 僕はあなたの あなたの 本当を知りたいから
出典:平井堅「ノンフィクション」(作詞:平井堅)
「成功」や「正しさ」といった表面的なものではなく、その人のダメなところ、弱いところ、かっこ悪いところも含めた「本当の姿」こそが知りたいんだ、と。
これは、亡くなったご友人に対して、「もっと君の本当の悩みや苦しみを知りたかった。どんな姿でもいいから、ただ生きていてほしかった」という、痛切な後悔の叫びのように聞こえます。
諦めきれない「生」への思い
2番の歌詞も、ままならない現実を描写します。
筋書き通りにいかぬ毎日は誰のせい 熱い戦いをただベンチで眺めてばかり 消えそうな炎両手で包むように 生きることを諦め切れずにいる
出典:平井堅「ノンフィクション」(作詞:平井堅)
人生の主役になれず、傍観者(ベンチ)になってしまうもどかしさ。 それでも、私たちは「生きることを諦め切れない」。 どれだけ辛くても、心のどこかで「生きたい」と願う、か細くも強い「炎」を両手で守っているんです。
だからこそ、彼は再び問いかけます。
人生は悲劇ですか? 成功は孤独ですか? 僕はあなたに あなたに ただ会いたいだけ 正しくなくていいから くだらなくてもいいから 僕はあなたの あなたの 本当を知りたいから
出典:平井堅「ノンフィクション」(作詞:平井堅)
「カバンの奥でなる鍵」「仲間呼ぶカラスの声」といった日常の音は、「生きている」からこそ聞こえる音。 そんな当たり前の日常の中で、ただ「あなたに会いたい」と願う気持ちが伝わってきます。
魂の叫び「会いたいだけ」
そして、曲はクライマックスへ向かいます。
何のため生きてますか? 誰のため生きれますか? 僕はあなたに あなたに ただ会いたいだけ
人生を恨みますか? 悲しみは嫌いですか? 僕はあなたの あなたの 本当を知りたいから 秘密なみだひとり雨 目覚めたら襲う不安 僕はあなたに あなたに ただ会いたいだけ
出典:平井堅「ノンフィクション」(作詞:平井堅)
生きる意味なんて分からなくてもいい。 人生を恨んでもいい。悲しみに暮れてもいい。 それでも、あなたの「本当」を知りたい。
最後のフレーズは、理屈を超えた魂の叫びです。
信じたい嘘 効かない薬 帰れないさよなら 叫べ 叫べ 叫べ 会いたいだけ
出典:平井堅「ノンフィクション」(作詞:平井堅)
「嘘であってほしい」と願っても現実は変わらない。 薬(気休め)も効かない。 そして、あの人とは「帰れないさよなら」(=死別)をしてしまった。 もうどうしようもない現実を前にして、できることはただ「会いたい」と叫ぶことだけ。
まとめ:重いけど、だからこそ優しい歌
平井堅さんの「ノンフィクション」は、ご友人の死という深い悲しみから生まれた、とてもパーソナルな曲です。
でも、そこには「成功しなくてもいい」「正しくなくてもいい」「みすぼらしくてもいい」と、私たちの弱さやダメな部分を丸ごと肯定してくれる、大きな優しさがあります。
もし今、あなたが生きることに疲れてしまったり、誰かと比べて落ち込んでしまったりしていたら、この曲を聴いてみてください。 「あなたの本当を知りたい」と願ってくれる人が、きっとどこかにいる。 そして、あなたも誰かの「本当」を必要としている。
この曲は、背中を強く押す応援歌ではなく、隣でそっと肩を抱き、一緒に涙を流してくれるような、そんな「生きるお守り」のような曲なのかもしれませんね。

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