第57回 二人のアカボシ / キンモクセイ

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ryou

はじめまして! このブログでは、音楽に詳しいわけではない、むしろ疎い部類である私、りょうが、世の中の有名な曲について「これってどういう歌なんだろう?」と調べたことを、のんびり雑談みたいに語っていきます。
このブログを書いていると、曲の魅力について「あれもこれも語りたい!」という気持ちでいっぱいになります。ですが、いつもぐっとこらえています。

なぜなら、この物語の主役は、素晴らしい作品と、それを聴く皆さん一人ひとりだからです。

私の解説が、皆さんが音楽から自由に何かを感じ取る楽しみの邪魔をしてはいけない。そんな想いから、あえて多くを語らず、皆さんの心の中に生まれる感想のための「余白」を大切にしています。

ぜひ、あなただけの感じ方で、音楽の世界を楽しんでみてください。

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こんにちは! 今日は、懐かしい名曲、2002年にリリースされたキンモクセイの2ndシングル「二人のアカボシ」についてお話ししようと思います。

キンモクセイというバンドは、自分たちが愛する「昔の日本のポップス(ニューミュージックやシティポップ)」への尊敬を込めて音楽を作っていました。

「二人のアカボシ」は、特にその色が濃く出ています。 キラキラした都会の夜景ではなく、「夜明け前の工業地帯」や「高速道路」といった、少しホコリ臭くてリアルな風景。それが、私たちの心の奥にある「懐かしさ」を刺激するんですね。

あの独特の世界観は、一体どのようにして生まれたのでしょうか?

まずは公式YouTubeで聴いてみよう

何はともあれ、まずは一度聴いてみてください。

キンモクセイ「二人のアカボシ」OFFICIAL MUSIC VIDEOより


🎵 歌詞の謎:「ミヤウジヤウ」ってなに?

歌詞の中に、ちょっと不思議なカタカナが出てきます。

「しみるようミヤウジヤウ ハルカカナタへ」

実はこれ、「明星(みょうじょう)」という言葉を、あえて昔の仮名遣い(歴史的仮名遣い)のような響きで歌っているんです。

さらに深いエピソードとして、これはChar(チャー)さんというギタリストの名曲『気絶するほど悩ましい』などの歌詞や歌い方へのオマージュ(尊敬を込めた真似)だと言われています。 「しみるよ〜ぅ」という独特の歌い回し、まさにあの時代の空気感を再現しているんですね。


🌃 歌詞が描く物語:二人はどこへ行くの?

では、歌詞をじっくり読み解いてみましょう。 ここには、「現実からの逃避」と「二人の決意」が描かれています。

1. 舞台は「夜明け前の工業地帯」

夜明けの街 今はこんなに静かなのにまたこれから始まるんだね 眠る埋立地(うみべ)と 化学工場の煙突に星が一つ二つ吸い込まれ

出典:キンモクセイ「二人のアカボシ」(作詞・作曲:伊藤俊吾)

物語の始まりは、まだ薄暗い早朝。 場所は、おそらく東京湾や神奈川の工場地帯(彼らの地元・相模原や国道16号線のイメージとも重なります)。 これから騒がしい日常(仕事や現実)が始まってしまう。その直前の静けさの中に二人はいます。

2. 衝動的な逃避行

あの高速道路の橋を 駆け抜けて君つれたまま 二人ここから 遠くへと逃げ去ってしまおうか

出典:キンモクセイ「二人のアカボシ」(作詞・作曲:伊藤俊吾)

このフレーズは、現状から抜け出したい、「君」と二人だけで新しい場所へ行きたいという、若者特有の切実でちょっぴり無謀な願いを表しています。 隣にいる「君」を連れて、このままどこか遠くへ行ってしまおうかと悩みます。夜明けの空の下、現実が始まる前に、衝動的に遠くへ逃げたいという気持ちが、聴く人の心に響きます。

3. 「二人のアカボシ」とは何か?

さようなら街の灯りと 月夜と二人のアカボシ

出典:キンモクセイ「二人のアカボシ」(作詞・作曲:伊藤俊吾)

「赤星(アカボシ)」という言葉は一般的な天体の名称ではありません。
実在しない言葉を使ったのは、“ふたりの関係を象徴する特別な星”を表したいからだと考えられます。

歌詞には、「夜明けの街で星が見えなくなる」「か細く消えそうな光」「他の灯りに飲まれてしまう存在」といった描写が続きます。

つまりアカボシとは、他の光にかき消されそうな、弱くても特別な星=ふたりの想いという象徴。

星を「赤」にしたのは、生命・情熱の色、危うさ・熱さ・か細さが同居する色だからです。夜が明ければ消えてしまう。街の光に負ければ見えなくなる。でも、確かにそこに輝いていた“二人だけのしるし”。この曲の切なさを象徴する、非常に詩的でキンモクセイらしい表現ですよね。

🎬 結末:そして朝が来る

懐かしいメロディーは 風と共に終わる 君の髪の毛が震えてる

出典:キンモクセイ「二人のアカボシ」(作詞・作曲:伊藤俊吾)

最後、二人は本当に逃げ切れたのでしょうか? 「君の髪の毛が震えてる」という表現からは、不安や寒さ、そして未来への迷いが感じられます。

おそらく、完全には逃げ切れなかったのかもしれません。 それでも、「君が振り向く前に(現実に戻る前に)、最後の想いを話そう」とする姿は、とても人間らしくて胸を打ちます。


おわりに

「二人のアカボシ」は、“朝がくると、僕らは別々の現実に戻らなきゃいけない”という切実な感情を歌詞にしています。

ふたりの関係は、まだ形になりきっていない。
だからこそ、朝になる前に、少しでも遠くへ逃げてしまいたい。
それくらい不安で、か細くて、壊れやすい。

でも、夜明けは必ずやってくる。

「繰り返される日常から、ほんの一瞬だけ抜け出そうとする大人の青春」を描いた曲だと思います。

夜明けの空の色、工場の煙、カーステレオから流れるラジオ。 そんな風景を思い浮かべながら、もう一度歌詞を噛み締めてみてはいかがでしょうか?

きっと、あの頃とは違った景色が見えてくるはずです。

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