こんにちは! 2021年に放送され、大きな話題となったドラマ『天国と地獄~サイコな2人~』。 スリリングな展開の最後に流れ、視聴者の涙を誘ったのが、手嶌葵さんが歌う『ただいま』です。
「別れの曲」でありながら、どこか温かくて、でもどうしようもなく悲しい。 今回は、この曲が生まれた背景や、歌詞に込められた深い思いを紐解いていきます。
まずは公式YouTubeで聴いてみよう
何はともあれ、まずは一度聴いてみてください。
手嶌葵「ただいま」Music Videoより
曲の背景と制作エピソード
1. ドラマ『天国と地獄』のために書き下ろされた楽曲
まず、この曲が生まれたきっかけが少し変わっているんです。 『天国と地獄』といえば、綾瀬はるかさんと高橋一生さんの魂が入れ替わっちゃう、ハラハラドキドキのサスペンスドラマでしたよね。
普通、こういうドラマの主題歌って、もっとこう、スリリングでテンポの速い曲を想像しませんか? でも、ドラマのプロデューサーさんが出したオーダーは真逆でした。
「2021年という今だからこそ、手嶌葵さんの歌声が必要だ」 「至極の別れのラブソングを」
こうリクエストしたそうです 。 事件を追うドキドキ感の裏側にある、「愛する人と離れ離れになる悲しみ」や「孤独」にスポットライトを当てたんですね。
2. 「明日への手紙」のゴールデンコンビが再集結
実はこの曲、作詞はいしわたり淳治さん、作曲は村松崇継さんが担当しています。 このお二人は、同じく手嶌葵さんの大ヒット曲であり、ドラマ『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』の主題歌だった『明日への手紙』を手掛けたコンビです。
「切ないバラードを作らせたら右に出るものはいない」と言われるチームが、手嶌葵さんの唯一無二の「ウィスパーボイス(ささやくような歌声)」を最大限に活かして作ったのがこの楽曲なのです。
🎤 心を癒やす「魔法の声」の正体
手嶌葵さんの声って、聴いているだけでふわっとした、不思議な安心感がありますよね。 実はこれ、「1/fゆらぎ(エフぶんのいちゆらぎ)」という成分が含まれていると言われています。
小川のせせらぎや、ろうそくの炎と同じ揺れ方をしていて、聴く人の脳波をリラックスモードにする効果があるんです。 ドラマで「次どうなるの!?」ってハラハラした後に、この声で優しく包み込まれる……。このギャップが、私たちの心を掴んで離さない理由の一つなんです。
歌詞に込められた意味を考察
タイトルの「ただいま」という言葉。普通なら温かい家庭の象徴ですが、この曲では「もう二度と聞けない言葉」として描かれています。
歌詞を追いながら、その切ない情景を見ていきましょう。
「あなた」が消えたあとのリアルな生活
あなた宛ての郵便がまだ ぽつりぽつりと届きます ドアを開けて点けた明かりが 今日もこの胸を暗くする
出典:手嶌葵 『ただいま』(作詞:いしわたり淳治 作曲:村松崇継)
別れたあとも、日常は続いていきます。 同棲していた部屋でしょうか。「あなた宛ての郵便」が届くたびに、まだここに彼がいた形跡を感じてしまう。 仕事から帰ってきて、暗い部屋に電気をつける。いつもなら誰かがいてくれた部屋が空っぽであるという現実が、「明かり」によって照らし出されてしまうのです。
受け入れられない別れと願い
別れ話は冗談だと言って ふざけた顔で驚かせて お願い 「ただいま」とつぶやいた 同じ景色にあなただけがいない
出典:手嶌葵 『ただいま』(作詞:いしわたり淳治 作曲:村松崇継)
「ただいま」と呟いてみても、返事はありません。 いしわたり淳治さんは、「『ただいま』と言っていたのは私、『おかえり』と言っていたのはあなた」という関係性を描いたと語っています。 ここでは主人公の「現実逃避」したい気持ちが痛いほど伝わってきます。「冗談だと言って」と願うほど、別れは突然だったのかもしれません。
きれいに片付いた部屋の「悲しさ」
散らかす人のいなくなった部屋は 悲しいくらい綺麗に片付いたまま 散らかった思い出は 仕舞い切れずに胸をあふれてくる
出典:手嶌葵 『ただいま』(作詞:いしわたり淳治 作曲:村松崇継)
ここの表現は、この曲の中でも特に素晴らしい部分です。 普通、部屋が片付いているのは良いことです。でも、ここでは「部屋が散らかる=あなたがそこに生きていた証」だったのです。 部屋はきれいになったけれど、心の中は思い出で散らかったまま。この対比が、喪失感をより際立たせています。
「強がり」が上手くなる自分への嫌悪
ひとりで生きていけるそぶりが 上手くなるのが嫌になります 誰も知らない弱い私は いつか誰かに出会うでしょうか
出典:手嶌葵 『ただいま』(作詞:いしわたり淳治 作曲:村松崇継)
周りに心配をかけまいと、平気なフリをしてしまう。 大人の恋愛ならではの葛藤です。ひとりで生きていけるように見えてしまう自分が嫌だ、本当は弱いのに……という本音がこぼれ落ちます。
止まった時間と、消えない声
忘れ物の腕時計がこの手の中で ああ もう戻らない時間を無情に刻む (中略) あなたの声の「おかえり」がまだ 目を閉じれば聞こえてくる
出典:手嶌葵 『ただいま』(作詞:いしわたり淳治 作曲:村松崇継)
置き忘れていった腕時計。時計の針は進んでいるのに、二人の時間はもう戻らないという皮肉。 そして最後は「おかえり」という言葉で締めくくられます。 タイトルは「ただいま」ですが、主人公が一番聞きたかったのは、愛する人からの「おかえり」だったのかもしれません。
まとめ:孤独を優しく包み込む「浄化」の歌
『ただいま』は、失恋の歌ではありますが、決して後ろ向きなだけではありません。 手嶌葵さんの慈愛に満ちた歌声が、誰にも言えずに抱えている「孤独」や「後悔」を優しく肯定してくれているように感じます。
別れの痛みを知っている人なら、誰もが「わかるよ」と感じてしまう名曲。 静かな夜に、ひとりで聴きたい一曲です。

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