細川たかしさんの力強い歌声といえば、まずこの曲を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか?
昭和60年(1985年)に発売された名曲『望郷じょんから』。
イントロの三味線の音色だけで、一瞬にして雪深い津軽へ連れて行かれるような感覚になりますよね。今回は、この歌に込められた「背景」や「歌詞の意味」を、少し深く掘り下げてみたいと思います。
まずは公式YouTubeで聴いてみよう
何はともあれ、まずは一度聴いてみてください。
望郷じょんから 公式より
『望郷じょんから』ってどんな曲?
この曲は、作詞・里村龍一先生、作曲・浜圭介先生というゴールデンコンビによって作られました。
細川たかしさんは北海道出身ですが、この歌の舞台は青森県の津軽地方です。 厳しい冬、荒れる海、そして激しくも哀しい津軽三味線の音色。これらを背景に、「都会へ出てきたけれど、夢破れて故郷へ帰れない男性の心情」が痛いほどリアルに描かれています。
三味線と尺八の演奏かっこいいですね。
実はこの曲、発売当時はそこまで大ヒットというわけではなかったのですが、細川さんの圧倒的な歌唱力と、聴く人の心に突き刺さる歌詞の内容で、じわじわと人気が広がり、今ではカラオケの定番曲、そして日本の演歌を代表する一曲となりました。
歌詞に込められた意味と物語
歌詞を追いながら、この主人公の男性が抱えている「想い」を紐解いていきましょう。
1. 三味線の音が呼び覚ます「望郷の念」
爺(じ)さまが叩く じょんから節の 泣き三味線が 風にちぎれて 聞こえてくるよ
出典:細川たかし 『望郷じょんから』(作詞:里村龍一 作曲:浜圭介)
東京で一人、お酒を飲んでいるのでしょうか。ふと、故郷のおじいさんが弾いていた「じょんから節」の音が耳に残っているような気がする…。 「風にちぎれて」という表現が素晴らしいですよね。遠い遠い故郷からの音が、途切れ途切れに、でも心にははっきりと届いている様子が浮かびます。
2. 夢を追って飛び出した「19歳の夜」
十九の青春(はる)を 吹雪にさらし 夜行に乗った
出典:細川たかし 『望郷じょんから』(作詞:里村龍一 作曲:浜圭介)
2番では、故郷を出た日のことが語られます。 「19歳」という、大人になりかけの多感な時期。吹雪の中、夜行列車に乗って東京へ向かったあの日。 「明かりを消して東京の空に叫ぶ」というシーンからは、都会での暮らしが思ったようにいかず、悔しさや寂しさが爆発しそうなギリギリの精神状態であることが伝わってきます。
3. 帰りたい、でも帰れない…「男の意地と嘘」
この歌の最も泣けるポイントは、3番のこの歌詞です。
辛さを堪え いい事ばかり 手紙に書いて
出典:細川たかし 『望郷じょんから』(作詞:里村龍一 作曲:浜圭介)
ここ、本当に切ないですよね。 本当は辛くて仕方がない。今すぐ帰りたい。でも、故郷の親や友人に心配をかけたくない、あるいは「成功するまでは帰らない」と大見得を切って出てきた手前、弱音を吐けない。 だから、手紙には「東京でうまくいってるよ」「毎日楽しいよ」と嘘を書いてしまうのです。
この短い節にいろんな想像が、かきたてられますよね。
帰るに帰れぬ 土産もなしに
出典:細川たかし 『望郷じょんから』(作詞:里村龍一 作曲:浜圭介)
「お土産(=成功の証やお金)」もなしに、手ぶらでおめおめと帰るわけにはいかない。 「帰ろかな、帰りたい」と繰り返すサビは、単なる願望ではなく、「帰りたいけど、今の自分にはその資格がない」という自分自身への葛藤の叫びなんです。
歌詞に出てくる場所の「秘話」
歌詞の中に、具体的な地名が出てきます。
- 小泊港(こどまりみなと): 津軽半島の西側にある、風待ちの港です。
- 岩木山(いわきさん): 「津軽富士」とも呼ばれる、地元の人にとって心の支えとなる山です。
作詞家の里村先生は、実際にこの地を訪れ、厳しい自然とそこに生きる人々の情熱を肌で感じてこの詞を書いたと言われています。 単なる「田舎」ではなく、具体的な地名が入ることで、「あの山が見たい」「あの港の風を感じたい」という主人公の切実さがよりリアルに響いてきます。
まとめ:なぜこの歌は心を打つのか
『望郷じょんから』が長く愛される理由は、細川たかしさんの歌唱力の素晴らしさはもちろんですが、「強がっている人の弱さ」を描いているからではないでしょうか。
親元を離れて暮らしたことがある人なら、誰もが一度は経験する「帰りたくても帰れない夜」。 そんな夜に、冷たいお酒と一緒に飲み込んだ涙の味が、この歌には詰まっています。
今度この曲を聴くときは、ぜひ「強がりな手紙を書いた青年の背中」を想像してみてください。細川さんのあの熱唱が、より一層胸に染みるはずです。

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