こんにちは。 木漏れ日がきらきらと揺れる昼下がり、ふと目を閉じると聴こえてくるような、優しくて少し切ない歌声。 手嶌葵さんの「風につつまれて」は、まさにそんな、私たちの心の柔らかな部分にそっと触れてくれる一曲ですよね。
この曲を聴くと、なぜだか遠い昔の風景や、もう会えない大切な人の笑顔を思い出してしまう…。 今日は、そんなノスタルジックな名曲が生まれた背景と、あの美しい歌詞に込められた深い意味を、一緒にたどっていきたいと思います。
まずは公式YouTubeで聴いてみよう
何はともあれ、まずは一度聴いてみてください。
手嶌葵 – 風につつまれてより
奇跡の「縁」が生んだ背景
この曲、実は2つの物語に命を吹き込んでいます。
もともとは、2023年から放送されている「高砂熱学工業」という会社のCMソングとして生まれました。 作詞は数々のヒット曲を手がけるいしわたり淳治さん、作曲は心に響くメロディーを生み出す村松崇継さんです。 CMでは、新しい世界へ一歩を踏み出す主人公の「気付き」や「想い」が描かれており、この曲がそっと背中を押すように寄り添っていました。
そして、ここからが素敵な「秘話」です。
2025年に公開された映画『蔵のある街』の制作チームが、この曲を耳にします。 映画の舞台は岡山県倉敷市。様々な葛藤を抱えながらも未来へ進もうとするヒロインの物語でした。
映画の音楽も担当していた作曲の村松さんが、改めてこの「風につつまれて」の歌詞を読み返したとき、そこに映画のヒロインの心情が驚くほどぴったりと重なることに気づいたそうです。
映画の監督はこう語っています。 「手嶌葵さんの歌声が、ヒロインの心の揺らめきのようで、ピュアで切なく、しかし確かな未来をつかみ取ろうという思いに溢れていた」
こうして、CMソングとして生まれた曲が、映画という新しい物語と出会い、ダブルタイアップとして私たちの元に届くという「奇跡の縁」が生まれたのです。
歌詞の意味をたどる ~少女から大人への道のり~
この曲は、一人の女性が「大切なあなた」を思い出しながら、成長していく姿を描いた物語です。歌詞を追いながら、その心の中をのぞいてみましょう。
1. 懐かしい日々の記憶
木漏れ日を風が揺らす 懐かしい光の雨 遠くであなたの声が こだました気がした
振り返るたびにいつも 大切なものに気づく こころに空いた隙間は 落としもののせい
出典:手嶌葵 『風につつまれて』(作詞:いしわたり淳治 作曲:村松崇継)
主人公はふとした瞬間に、過去の温かい記憶に包まれます。 「あなた」は、もうそばにはいないのかもしれません。それは親、恩師、あるいはかつての恋人…。 大人になって、大切な「何か」を落としてきたような、心の「隙間」。その正体は、そばにいてくれた「あなた」の存在そのものだったと気づきます。
2. 見守ってくれた「無償の愛」
移りゆく日々の中で 思い出す優しい笑み どんなときも あなたの愛につつまれてた 空気のように
出典:手嶌葵 『風につつまれて』(作詞:いしわたり淳治 作曲:村松崇継)
当時は当たり前すぎて気づかなかったけれど、自分はいつも「空気のように」自然な、大きな愛に見守られていたんだ…。 忙しい日々の中で、その温かさを思い出し、胸が熱くなります。
3. 成長した「私」の強がり
この坂を上ればまた 懐かしい海が見える (中略) あの時の少女は今 少しだけ嘘もつける 楽しく暮らしているわ 心配ないからね
出典:手嶌葵 『風につつまれて』(作詞:いしわたり淳治 作曲:村松崇継)
「あの時の少女」だった主人公は、今、大人になりました。 遠い場所から見守ってくれている「あなた」へ、「少しだけ嘘もつける」ようになったよ、と報告します。 この「嘘」は、悪い嘘ではありません。「楽しく暮らしているわ」「心配ないからね」という、相手を安心させたいという優しさからくる「強がり」です。それこそが、彼女が成長した証なのです。
4. 大人になることの葛藤
もう大人だから もう大人なのに ふたつの想いが ぶつかるたびに胸は痛むけど
出典:手嶌葵 『風につつまれて』(作詞:いしわたり淳治 作曲:村松崇継)
でも、心はそんなに単純ではありません。 「もう大人だから」しっかりしなきゃ、という気持ち。 「もう大人なのに」どうしてこんなに不安で、あなたに会いたくなるんだろう、という気持ち。 この2つの想いがぶつかるたびに胸は痛むけれど、それも抱えたまま、彼女は生きていきます。
5. あなたがくれた「踏み出すちから」
まぶたの裏に映る人 あなたの背中を追いかけた 涙で明日が見えない日も 踏み出すちからをくれたから
そこから私が見えますか
出典:手嶌葵 『風につつまれて』(作詞:いしわたり淳治 作曲:村松崇継)
主人公が今、踏み出せる力。それは、かつて「あなた」がくれた言葉や、見せてくれた背中のおかげ。 過去の思い出は、彼女を縛るものではなく、未来へ進むための「光」になっています。
最後の「そこから私が見えますか」というフレーズ。 これは、遠い場所(あるいは天国)にいる「あなた」への、切なくも温かい呼びかけです。 「あなたの愛に包まれて、私は今、ちゃんと前を向いて歩いていますよ」…そんな報告のように聞こえませんか?
「風につつまれて」は、失ったことの哀しさを受け入れ、それを未来への力に変えていく「成長」の歌でした。 手嶌葵さんの透明な歌声が、その切なさと温かさを、風のように私たちの心に届けてくれますね。
あなたの心の中にも、まぶたの裏に映る「大切な人」がいるのではないでしょうか。 ぜひ、その人を思い浮かべながら、もう一度この曲を聴いてみてくださいね。

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