こんにちは。 春になると、ふと思い出す歌はありませんか?
桜の季節は、出会いと別れの季節。そんな時、切なくも温かいメロディでそっと心に寄り添ってくれるのが、おがさわらあいさんの「サクラ知れず」です。
この曲、ただの失恋ソングだと思って聴いていると、その歌詞に込められた物語の深さに胸を打たれるかもしれません。
今日は、この「サクラ知れず」ができた背景や、歌詞に込められた切ない思いについて、その意味を一緒にたどっていきたいと思います。
まずは公式YouTubeで聴いてみよう
何はともあれ、まずは一度聴いてみてください。
おがさわらあい/サクラ知れずMVより
ただの失恋じゃない。歌詞に秘められた「三角関係」
音楽評論家の富澤一誠さんは、この曲を「現代の『神田川』」と評し、その背景には非常に切ない「三角関係」の物語があると解説しています。
それは、こんなストーリーです。
主人公の女性には、幼なじみの男性が二人いました。 3人はとても仲が良く、一緒に夢をみて東京へ出てきました。
しかし、ある時、そのうちの一人(主人公が想いを寄せていた「あの人」)が、事故か何かで亡くなってしまいます。
残された主人公と、もう一人の男性(「あなた」)。 深い悲しみを抱える二人は、お互いを支え合い、寄り添いながら生きていくことになります。
この背景を知ってから歌詞を読むと、一つ一つの言葉がまったく違う意味を持って響いてくるんです。
歌詞の意味をたどる:主人公の「決意」とは
この物語を頭に浮かべながら、歌詞の世界を見ていきましょう。
1. 静かな川面と、二人の沈黙
小さな花びらが 川面にゆれ落ちて 時間を航るように 静かに流れてく 黙ったままの二人
出典:おがさわらあい『サクラ知れず』(作詞. 作曲:田村武也)
冒頭のシーン。桜が散るのを「あなた」と二人で見つめています。 でも、二人の間には会話がありません。主人公の心は、今そばにいる「あなた」ではなく、別の場所にあることが伝わってきます。 「あたしも 帰郷(かえ)ろうかな」という言葉は、東京での夢や生活に疲れただけでなく、辛い思い出から逃げ出したいという気持ちの表れかもしれません。
2. 「あなた」への罪悪感と、「あの人」への想い
ごめんね あたしやっぱり あの人を忘れてない いつでも いつでも あなたは そばにいてくれるのに (中略) バカだね バカだね これじゃ 幸せになれないね
出典:おがさわらあい『サクラ知れず』(作詞. 作曲:田村武也)
ここでの「あの人」とは、亡くなってしまった想い人。 そして「あなた」は、同じ悲しみを抱えながらも、主人公をずっとそばで支えてくれている、もう一人の幼なじみです。
「あなた」の優しさは痛いほどわかっている。それなのに、亡くなった「あの人」を忘れられない…。そんな自分を「バカだね」と責めています。「これじゃ幸せになれないね」という言葉は、「あなた」を幸せにできない自分自身への言葉でもあるのです。
3. 三人で見た夢の「東京行き列車」
あなたとあの人と あの日飛び乗った 東京行きの列車は、どこへ向かってるの (中略) 呼んでも 呼んでも ここには あの人はもういない
出典:おがさわらあい『サクラ知れず』(作詞. 作曲:田村武也)
このフレーズこそ、物語の核心です。 かつて3人で一緒に夢をみて、希望を胸に飛び乗った東京行きの列車。 でも今、「あの人」はもうこの世にいない。どれだけ叫んでも、もう帰ってこない。 「もしもひとりぼっちだったら…震えてただけでした」という歌詞は、「あなた」が一緒にいてくれたから、なんとか立っていられた、という感謝の気持ちの裏返しでもあります。
4. 最後の「さよなら」に込められた本当の意味
あなたはわかってたんでしょ なのにやさしかったんでしょ (中略) ごめんね あたしやっぱり 一人で歩いていくよ もう少し もう少し ここで 頑張ってみるから さよなら
出典:おがさわらあい『サクラ知れず』(作詞. 作曲:田村武也)
主人公は気づいています。 「あなた」も「あの人」を失った悲しみを抱えているのに、あたしが「あの人」を忘れられないことを知りながら、優しく支えてくれていたことに。
だからこその、最後の「さよなら」です。
これは、「あなた」が嫌いになったからではありません。 亡くなった「あの人」への想いに縛られたまま、お互いが同情や悲しみで繋がっていては、二人とも前に進めない。 「弱いままの自分じゃ 誰も愛せないから」——。
「あなた」の優しさに甘え続ける弱い自分と決別し、一人の人間としてしっかり立つために。 そして、いつかお互いがちゃんと前を向いて歩き出せるように。
これは、悲しい別れであると同時に、二人にとっての「未来へ進むための決意」の「さよなら」なんですね。
まとめ
「サクラ知れず」は、ただ桜が散るのを見て失恋を嘆く歌ではなく、大切な人を失った喪失感、支えてくれる人への感謝と罪悪感、そして、それでも前を向いて歩き出そうとする人間の「決意」を描いた、深い深い物語の歌でした。
おがさわらあいさんの透明感がありながらも力強い歌声が、主人公の心の機微を繊細に表現していて、聴くたびに涙腺がゆるんでしまいます。
春になってこの曲を聴くときは、そんな切ない物語にも思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

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